気になる中国企業の上場規則厳格化呼び掛け

6月 5, 2020 気になる
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ポンペオ米国務長官は4日、声明で中国企業の「詐欺的な」会計慣行について米投資家に警告。そうした企業の上場規則を厳格化する米ナスダックの最近の決定は世界の取引所のモデルになるべきだとの見解を示した。

そのあとも厳しい言葉が続く。「米投資家は、米企業と同じ規則を順守しない企業に伴う隠された不当なリスクにさらされるべきではない」と指摘。「ナスダックの措置は米国の他の取引所や世界の取引所にとってモデルとなるべきだ」と語った。また「全ての上場企業が国際的な会計・監査基準を確実に順守することを監査法人に義務付けたナスダックを称賛する」と述べた。

米国で何があったかあまり日本で報道されていないので、簡単な経緯説明。

中国版スターバックスと称されるラッキンコーヒー(瑞幸珈琲)は2017年創業。2019年5月17日、米ナスダック市場に上場。17ドルで売り出された同社株により、5億6100万ドル(約600億円)を調達した。同社株は一時25.96ドルの高値をつけ、時価総額は60億ドル近くまで膨らんだ。当時、同社の創業者のJenny Zhiya Qian(銭治亜)は発行株式の17%近くを保有、彼女の資産額は一時的に10億ドル(約1100億円)を突破。

一方で、ラッキンコーヒーは、アメリカの投資会社から不正会計を指摘されていた。ラッキン側が調査結果を公表したのは2020年4月2日。2019年の売上高の大半に当たる約22億元(約330億円)の水増しが発覚。これを受けて、2日のラッキンの株価は8割近く下落。2020年4月7日からはラッキン株は売買停止に。2020年5月12日には、Zhiya Qian最高経営責任者(CEO)と、Jian Liu最高執行責任者(COO)を解雇。2020年5月19日、ラッキンコーヒーは米ナスダック市場を運営するナスダックから上場廃止の通達を受けたと明らかに。ラッキンの不服申し立てについての結論が出るまで、同社は上場廃止とならない。米ナスダックでの売買は5月20日に再開。

中国企業による詐欺的なIPOでは、日本にもいくつもケースがある。例えば、アジア・メディアや新華ファイナンスなど。

アジア・メディアは2007年4月に東証マザーズに上場。上場時の時価総額は、362億円。しかしながら、実態の良く分からない会社。CEOが子会社の預金約16億円を私的に流用し、2007年8月に上場廃止に(中国でも同様の手口を行っていた模様)。ほぼ詐欺的に東証に上場し、当該IPO銘柄を高値で買った日本の投資家が中国系企業の創業者たちにお金を巻き上げられてきた格好。

新華ファイナンスは1999年、香港で創業。中国の国営通信社、新華社の関連会社と資本提携し、金融情報サービスのブランドに「新華」の名称を使用する権利を取得。新華ファイナンスは、2004年10月に東証マザーズに上場。その後、2005年7月には米ナスダックにADR(米国預託証券)を上場。これが後に命取りに。
創業者で元CEO(最高経営責任者)のブッシュを含む元役員3人が、在任中のインサイダー取引、粉飾決算などの容疑で米国の裁判所に起訴された。米国での起訴は、ADRに関して米証券取引委員会(SEC)に提出した有価証券報告書に虚偽があり、SECおよび投資家を騙したことが根拠。ブッシュならびに共同創業者のペリーノは同じ手口で持ち株の不正売却を繰り返した。米司法省によると一連の不正により、3人は5000万ドル(約40億5000万円)以上の利益を得たという。後に、被告は司法取引にサイン。新華ファイナンスは上場後、一時は投資家の高い関心を集め、株価は05年3月に43万9000円(同年9月の株式分割考慮後は14万6333円)を付けた。しかし、その後株価は低迷し、最高値の1%未満。2018 年 6 月 7 日に「新華ファイナンス ジャパン株式会社」から「ビートホールディングス ジャパン株式会社」に変更。

正しいディスクロージャー(情報開示)こそがが投資の基盤。ポンペオ米国務長官に強く賛成。

投稿者: CFA

米国証券アナリスト、日本証券アナリスト検定会員。また、経営学修士号(MBA)保持者ならびにベータ・ガンマ・シグマ所属。 仕事でも色々なことを考えるので、投資にあたって面白いと思った情報を継続的にご紹介します。皆様のご投資の参考になればと思い、Finepresa(フィネプレサ)を立ち上げました。 よろしくお願い致します。