2020年6月5日、5月の米国雇用統計が発表された。エコノミストの予想を遥かに上回って雇用状況が改善。
米雇用統計とは、米国労働省が毎月発表する、米国の雇用情勢を調べた景気関連の経済指標。全米の企業や政府機関などに対してサンプル調査を行い、10数項目の統計を発表(失業率、非農業部門雇用者数、建設業雇用者数、製造業雇用者数、小売業雇用者数、金融機関雇用者数、週労働時間、平均時給など)。この統計の中でも非農業部門雇用者数と失業率の2項目が投資家から特に注目されていて、FRBの金融政策にも大きな影響を与えると言われている。外国為替市場において、最大の経済指標の一つ。
米労働省によると、5月の非農業部門雇用者数は前月比250万人増加。一方で、エコノミスト予想の中央値は750万人の減少。ブルームバーグが調査したエコノミスト78人の中で最も楽観的な予測でも、80万人の減少予想。5月の雇用統計において失業率は1930年代の大恐慌以来の高水準である20%に接近すると予想されていたが、実際には13.3%に低下。78人のエコノミストたちが予想を外していることが大変興味深い。
なお、4月の雇用統計では非農業部門雇用者数が約2070万人減と、1930年代の大恐慌以降で最大の落ち込みを記録。それに伴い、4月の失業率は14.7%と戦後最悪。それが、5月の雇用統計では失業率が13.3%に低下。この13.3%という失業率は過去の標準から見ればなお非常に高水準であるものの、各国の拡張的な財政政策ならびに緩和的な金融政策を背景に世界経済への楽観的な見方が広がっている。
5月雇用統計を経て、(より一層のリスクオンへの)「転換点を迎えたのではないか」との声も。リスクオンムードの中、米国金利の上昇(国債価格の下落)、円安ドル高、リスク性資産である株や社債、原油価格の上昇継続か。
バンク・オブ・アメリカのデータによると、6月3日までの週は、社債ファンドに過去最高の300億ドル超の資金流入。そのうち、投資適格債券ファンドには、過去最高の208億ドルが流入。ハイイールド債ファンドにも102億ドルが流入。
また、ニューヨーク原油先物相場は4日続伸。OPECプラスが協調減産を1カ月延長する見通しとなったことに加え、米雇用統計が予想外に堅調ため。WTI原油先物7月限は5.7%高の1バレル=39.55ドルと、3月6日以来の高値で終了。週間でも上昇し、6週連騰に。
足元のマーケットの大多数の予想通りリスクオンムードが継続するのか、それとも新型コロナウイルスの第2波のリスクが重しとなるのか、もしくは、米中摩擦激化のリスクが顕在化するのか、判断が必要な局面。
個人的には、マーケットの回復する速度が速すぎると心配。マーケットは今後リスクシナリオの変化に敏感になる可能性がある。ヘッジ銘柄を保有しつつ、今後の若干の調整局面に備えて、守りを固くしておき、来る調整局面ではファンダメンタルズ対比で妙味がある銘柄についてしっかりと投資をしたいところか。