気になる銀行による貸出の伸び

6月 8, 2020 気になる
15+

銀行・信金2020年5月の貸出平均残高は過去最高の伸び。特に都銀等の伸びが大きい。

日銀が2020年6月8日発表した5月の貸出・預金動向によると、銀行・信金計の貸出平残は前年比4.8%増(4月は2.9%増)。この5月の伸び率は統計公表開始来、過去最高。

新型コロナウイルスの感染拡大に伴う事業環境の急速な悪化で、企業の運転資金ニーズが高まり、政府・日銀の資金繰り支援策が融資増につながった格好。緊急時の対応が奏功していることが確認できる。

業態別では3メガバンクなどの都銀等の伸び率が6.6%と4月の3.4%よりさらに急速に増加。ただ、地銀や信金の貸出増加率より都銀等の貸出増加率が大きい状況が4月以降継続しており、大手行と取引の多い大企業向けの融資が活発だったと推測され、緊急時の経済対策の効果として気になる部分。

背景として、これまでの緩和的な金融政策の効果もあり、銀行による総与信の増加ペースについて、GDP対比でバブル期にみられたような過熱感が2020年4月に日銀から報告されている。4月に日銀が発表した「金融システムレポート」で項目ごとのヒートマップを確認すると以下の通り。

ヒートマップは、各種の⾦融活動指標のトレンドからの乖離度合いを⾊で識別することによって、1980 年代後半のバブル期にみられたような過熱感の有無を⽰すもの。これをみると、全 14 指標のうち 12 指標が過熱でも停滞でもない「緑」。⼀⽅、「不動産業向け貸出の対 GDP ⽐率」が過熱を⽰す「⾚」。また、今回は、前回レポート時点では「緑」だった「総与信・GDP ⽐率」が、1991 年初以来はじめて「⾚」へと転化

これは、直接的には分⺟に当たる GDP の動き(海外経済の減速に、消費税率引き上げや⾃然災害の影響が加わったことなどによる 2019 年 10〜12 ⽉期の⽐較的⼤幅な減少)によるものであるが、より本質的には分⼦に当たる総与信が、それ以前から趨勢的に、GDP 対⽐で⾼めの伸びを続けていたことが影響。言い換えると、経済成長より速いスピードで融資が提供されていることを表す。

日銀にとって、民間金融機関の①ミドルリスク企業向け貸出、②不動産賃貸業向け貸出、③⼤型 M&A 関連などレバレッジが⾼い案件向け貸出を中⼼に、脆弱性への注意は継続的に必要とのことであったが、仮に与信が緩くなっている場合には、マクロ経済にストレスがかかると上記領域でデフォルトが発生しやすいと推測される。社債への投資の際にも同様の視点は、重要。

投稿者: CFA

米国証券アナリスト、日本証券アナリスト検定会員。また、経営学修士号(MBA)保持者ならびにベータ・ガンマ・シグマ所属。 仕事でも色々なことを考えるので、投資にあたって面白いと思った情報を継続的にご紹介します。皆様のご投資の参考になればと思い、Finepresa(フィネプレサ)を立ち上げました。 よろしくお願い致します。