FRBが経済見通しを発表するのは2019年12月以来で、新型コロナウイルス危機後では初めて。マクロ経済の見通しで投資の参考となりそうな部分を以下、抽出。
FRBの経済見通しでは、米国のGDPは2020年6.5%縮小すると予想。
景気回復が今年下半期に始まり、2021年に本格化、今後数年間続くと予測。2021年の経済成長率予想をプラス5.0%とした。
失業率は、2020年末で9.3%、2021年末で6.5%、2022年末で5.5%に低下すると見込んだ。
利上げの見通しについては、 少なくとも2022年まで金利をゼロ近辺に維持するとの見通し。“We’re not even thinking about thinking about raising rates.”(「我々は、利上げについて考えようと考えたこともない。」)とも言及。「検討することを検討したこともない」という表現で、足元、非常にリモートな確率であることを表明。
米国では2月以降、2000万人以上が失業しており、パウエル議長は、そうした人々が再び職に就くには何年もかかる可能性があるとも指摘。
「長い道のりだ。しばらく時間がかかる」と述べた。
個人的には、米雇用統計の非農業部門就業者数(前月比)については以下のロイター社のグラフがとても分かりやすい。
その上で、パウエル議長は「労働市場と経済を支えるためFRBの政策手段を活用することが可能であり、完全に回復するまで活用できる」と表明。FRBの政策手段を活用することで、労働市場を昨年末の状況に回復させるために取り組むとした。
金融政策で労働市場をしっかりと支えるというFRBのデュアルマンデートに則した強い決意が確認できる。
そして、緩和的な金融政策は一般的に株価を上昇させる(金融相場)。FRBは、金融市場に動揺が広がれば利下げなどで対処する。この関係性ゆえに、通称「グリーンスパン・プット」と呼ばれる。これは、当局者の度重なる否定にもかかわらず、市場がその存在を信じ続ける米金融当局の政策スタンスである。(なお、グリーンスパン・プットは厳密な意味では利下げでの株価上昇であるが、足元はマイナス金利となるさらなる利下げにはFRBは抵抗感があるようである。ここでは緩和的な金融政策による株価上昇の意。)
なお、資産買い入れプログラムについても、米国債で月間約800億ドル、政府機関債および住宅ローン担保証券(MBS)で月間400億ドルという「現在のペース」を維持すると明言。今後購入のペースが引き上げられたり、他の措置で補完される可能性もある。
パウエル議長は会見で「可能な限り力強い景気回復を確実にするため、FRBはあらゆる政策手段を駆使することにコミットしている」と再表明。