気になるポートフォリオ運用(2)

6月 16, 2020 気になる
15+

前回のポートフォリオ運用のパフォーマンスの考え方の誤りと改善方法は以下の通り。

ポイントは、「トータルリターン」と「リバランス」。

トータルリターン

まず、「気になるポートフォリオ運用(1)」での計算の誤りであるが、結論から言うと分配金がパフォーマンスの計算に入っていないことである。株価指数などは「トータルリターン」という断りがない限り、通常、「プライスインデックス」といわれるものである。分配があった場合、プライスインデックスの指数はその分低下する。例えば、指数が100円のものが3円の分配金があると、その直後(権利落ち日の直後)指数は(その他の条件が同じであれば)97円になる。一方、投資家の手元にはその分配金が入ってくるので、それを考慮してパフォーマンスを把握する必要がある。残念ながら、足元、東証の上場ETFのトータルリターンを計算してくれる無料ツールはないが、投資判断の際は必ず分配金利回り(株式の場合は配当利回り)を確認することが重要。

具体的には、株式やETFの場合には四季報もしくは適時開示情報を参照の上、大雑把で良いので分配金利回りを確認したい。

例えば、今回活用している<2512>と<2514>について、次の半年についても同じ分配金と仮定すると、おおよその分配金利回りは以下の通り計算できる。

  • NF外債ヘッジあり <証券コード:2512>
    • 年率1.39% = 730円÷(6月16日終値 1049円×100口)×2(年率)
  • NF外株ヘッジあり <証券コード:2514>
    • 年率0.75% = 410円 ÷(6月16日終値 1091円×100口)×2(年率)

分配金利回りも刻々と変化するため、上記の分配金利回りが過去も将来も同じとは仮定はできないが、過去のパフォーマンスを見る際には把握しておきたい。

プライスインデックスのパフォーマンスに分配金利回りを調整したものが、トータルリターンである。

リバランス

ポートフォリオ運用のパフォーマンス改善にあたって、役に立つ考え方が「リバランス」である。あらかじめ定めた期間で相場の変動などにより変化した投資配分の比率を調整すること。ポートフォリオの一部を売却したり、買い増しをすることによって行う。

例えば、外国債券が好調で、外国株式が苦戦している場合、当初、外国債券40%と外国株式60%の割合で投資を開始したとしても、1年後にポートフォリオ全体に占める割合が45%と55%になっているとする。この場合、1年後の時点で、好調であった外国債券を一部売却し、苦戦している外国株式を一部購入することで、当初の外国債券40%と外国株式60%の割合に戻すことを「リバランス」という。

一般的に、株のほうが債券よりも価格の変動幅が大きい(ボラティリティが高い)ので、債券の累積リターンはクーポンの存在から比較的安定的に増加していく一方、株が相対的に苦戦しているタイミングでは株の買い増しということになる。また、株が相対的に好調なタイミングでは一部売却により益出しをして、債券にその売却分をよけておくことになる。結果として、株が債券に対して相対的に高くなったら売却し、安くなったら買い増すということになる。

株価指数が中長期的には債券指数程度は上昇するという前提を置くのであれば、株価指数を安く買って高く売る事を繰り返すので、ポートフォリオ運用のパフォーマンス改善につながる。

60/40のポートフォリオで年1回のリバランスありの2001年1月末から2020年5月末までのポートフォリオリターンは、少し長い計算をすると年率2.2%。

加えて、<2514>と<2512>の分配金利回りをそれぞれ1.39%と0.75%と仮定し、2000年1月末から2020年5月末までのプライスリターンを中長期のプライスリターンと仮定すると、60/40のポートフォリオの中長期のトータルリターンは円で年率3.2%となる。この水準リターンであれば、年金基金や機関投資家の目標リターンとしては十分。そういった投資家ではリスク量の計測とリスク/リターンの最適化に進んでいくことになる。

一方、個人投資家によっては、もっとリスクを取ってでもリターン水準を上げたいというケースも想定される。その場合、アプローチは主に2つある。

一つは、「目利き」勝負で、投資対象を選ぶことでより高いリターンを目指す方法。基本的にバイ&ホールド

もう一つは、「タイミング」勝負で、投資対象はよく知られているものだが(例えば、為替市場)、売り買いを適切なタイミングで行うことで利益を積み重ねる方法

おすすめは、「目利き勝負」で、マーケットに留まる時間を長くすること。

以下は、Benjamin Graham のアドバイス。

「フェアバリュー(妥当と思われる価格)より安ければ買い、フェアバリューを超えてくれば売る。」財務分析を通じて企業価値を計算して、フェアバリューを特定することが重要。

By timing we mean the endeavor to anticipate the action of the stock market—to buy or hold when the future course is deemed to be upward, to sell or refrain from buying when the course is downward. 

By pricing we mean the endeavor to buy stocks when they are quoted below their fair value and to sell them when they rise above such value. 

A less ambitious form of pricing is the simple effort to make sure that when you buy you do not pay too much for your stocks. This may suffice for the defensive investor, whose emphasis is on long-pull holding; but as such it represents an essential minimum of attention to market levels.

We are convinced that the intelligent investor can derive satisfactory results from pricing of either type. 

We are equally sure that if he places his emphasis on timing, in the sense of forecasting, he will end up as a speculator and with a speculator’s financial results.” 
– Benjamin Graham

ちなみに、Benjamin Graham(ベンジャミン・グラハム)氏は、アメリカ合衆国の経済学者。「バリュー投資の父」「ウォール・ストリートの最長老」と呼ばれる投資家で、学生時代に唯一彼からA+の成績をもらった教え子に現在、個人資産7兆円以上を有するウォレン・バフェット氏がいる。

投稿者: CFA

米国証券アナリスト、日本証券アナリスト検定会員。また、経営学修士号(MBA)保持者ならびにベータ・ガンマ・シグマ所属。 仕事でも色々なことを考えるので、投資にあたって面白いと思った情報を継続的にご紹介します。皆様のご投資の参考になればと思い、Finepresa(フィネプレサ)を立ち上げました。 よろしくお願い致します。