気になる香港国家安全法

5月 26, 2020 気になる
20+

香港国家安全法は米国による中国への経済制裁に大義名分を与える可能性も。

中国は先週開幕した全国人民代表大会(全人代、国会に相当)で、香港国家安全法を制定する方針を示した。国家の分裂や政権転覆、テロ活動に対処することが目的で、香港に中国の情報機関が設立される可能性も。

本日、2020年5月26日、香港のキャリー・ラム行政長官は、中国政府が制定をめざす「香港国家安全法」について、香港における権利や自由を侵害することはないと強調。

一方、これまでにトランプ米政権は中国に対し、実施を強行すれば強い措置を講じると警告。米国が中国に対し厳しい制裁を科した場合、香港そして米国にも害が及ぶ可能性があるため、米政権の選択肢は限られるとの見方があるものの、ここはトランプ大統領。強い態度の可能性も。

5月6日にはトランプ大統領は、新型コロナウイルスに関して、「真珠湾攻撃よりも、世界貿易センターよりもひどい。こんな攻撃はこれまでなかった」、「これは起こるべきではなかった。発生源で止められたはずだった。中国で止められたはずだった。発生源で止めるべきだった。だがそうならなかった」と発言。

また、ポンペオ米国務長官が5月22日に、米国が一国二制度を前提に関税などで香港に認めている優遇措置を見直す可能性があると示唆していることも考えると、米中貿易摩擦再燃の可能性が高まっている。

これまでに、新型コロナウイルスに関して米国と中国の対立は深刻化しており、貿易に加え、資本取引でも摩擦が強まってきている。

米上院本会議は5月20日、米国に上場する外国企業に経営の透明性を求める法案(「外国企業説明責任法」)を可決。外国政府の支配下にないことを証明するよう求めるほか、米規制当局による会計監査状況の検査を義務付け。3年間、検査を拒否した場合は上場廃止。米国の対中強硬姿勢が一段と強まっている。同法案は2019年に共和党と民主党の議員が超党派で提出したもので、5月20日に全会一致で可決。下院が可決しトランプ大統領が署名すれば成立。

また、米新興株式市場を運営するナスダックは近く、外国企業の上場基準を厳格化。新規株式公開の調達規模に下限を設け、中国資本の上場を事実上制限。

さらに、米政府機関は今月、米公務員年金基金が中国株に投資する計画を中止。

米国による中国への資本取引に関する包囲網が徐々に構築されているように見える。

香港国家安全法はそれら包囲網に大義名分を与えるか。

投稿者: CFA

米国証券アナリスト、日本証券アナリスト検定会員。また、経営学修士号(MBA)保持者ならびにベータ・ガンマ・シグマ所属。 仕事でも色々なことを考えるので、投資にあたって面白いと思った情報を継続的にご紹介します。皆様のご投資の参考になればと思い、Finepresa(フィネプレサ)を立ち上げました。 よろしくお願い致します。