景気循環セクターは景気に敏感に反応し、収益変動性と営業レバレッジが高い業種のことで、例えばテクノロジーセクター、金融セクターなどがそれにあたります。景気循環セクターの商品やサービスは、一般的に高価で日常生活に直結しないものが多いため、経済が停滞しているときには購入が控えられることが多いです。このため、景気が冷え込むと、景気循環セクターの企業の収益は特に低下することになります。
一方、ディフェンシブセクターは、安定的な需要を見込める商品やサービスを提供する業種で、食品メーカーやスーパー、薬局などの生活用品店等を含みます。景気の悪化により消費者の収入が減っても、食料品や医薬品の支出が大幅に減少することはあまりなく、企業の収益低下が比較的穏やかなセクターです。
人口動態を考えたときに米国経済のほうが日本経済より成長率が高くなりやすいと考えられますので、景気循環セクターを代表するETFとディフェンシブセクターを代表するETFと、それぞれ米国のもののパフォーマンスを以下にまとめています。
景気循環セクターを代表するETFには以下のものがあります。
- テクノロジー・セレクト・セクターSPDR ファンド <XLK>
- 金融セレクト・セクター SPDRファンド <XLF>
一方、ディフェンシブセクターを代表するETFには以下のものがあります。
- ヘルスケア・セレクト・セクターSPDRファンド <XLV>
- 公益事業セレクト・セクターSPDRファンド <XLU>
一般的には、景気拡大期の前に景気敏感セクターETFを購入し、後退期に入る前には代わりにディフェンシブセクターETFを購入するということを繰り返せば常に収益を上げ続けることができるではないかと考えられており、これをセクターローテーション戦略と言います。
では、年初来の新型コロナウイルスの感染拡大とそれに伴うロックダウンなどの影響、そして先行き不透明感を持ちながらも徐々に進展している回復期に対応するうえで、セクターローテーション戦略は機能しているのでしょうか。
finvizのグラフはセクターごとの変化を大きくとらえるうえで大変便利です。以下のグラフは2020年7月30日時点のスクリーンショットです。興味深い部分を黄色の枠で囲んであります。
リアルタイムの数字は、是非一度こちらよりご覧ください。
上記の年初来のパフォーマンスをご覧いただくと、景気循環セクターの代表であるテクノロジーセクターは大幅に上昇する一方、同じ景気循環セクターの代表である銀行セクターは大幅に下落しています。同様に、ディフェンシブセクターの代表であるヘルスケアセクター(特に診断&研究)が大幅に上昇する一方、同じディフェンシブセクターの航空&防衛セクターやエネルギーセクターは大幅に下落しています。
それぞれのセレクト・セクターSPDRファンド(ETF)のパフォーマンスについてもグラフにしてみました。2019年末を1とした累積のパフォーマンスのグラフは以下の通りです。
それぞれ、青色がテクノロジーセクター(景気循環)、茶色がヘルスケアセクター(ディフェンシブ)、緑色が公益事業セクター(ディフェンシブ)、赤色が金融セクター(景気循環)に連動するETFを表しています。
景気循環セクターとディフェンシブセクターという切り口では年初来のパフォーマンスをきれいに捉えることができない状況です。
ただ、これを「テクノロジー」vs. 「グローバリゼーション」という切り口で見るとパフォーマンスを分類できます。テクノロジーが商品を「進化」(縦)させ、グローバリゼーションがそれを「横展開」(横)するイメージです。これまでのグローバリゼーションの流れからテクノロジーに時代のフォーカスが勢いをつけて変わってきているように見えます。
「縦軸」のテクノロジーセクターや医療セクター(診断&研究)が大幅に上昇する一方、「横軸」グローバリゼーションの恩恵を本来受ける航空セクターやエネルギーセクター、銀行セクターは回復が遅れているわけです。
これまでの景気循環と異なり、新型コロナウィルスの感染拡大というマクロ経済にとって外因性のショックで経済活動が急激に冷え込んだため、通常の景気循環と異なり、レジームの転換が起こりつつあるともいえます。
今後の投資にあたっては、縦軸のセクターによりフォーカスを当てて時代の流れに注目していく必要があるのではないかと考えています。
ご参考になれば幸いです。