ADP雇用統計は、米国の大手給与計算アウトソーシング会社のAutomatic Data Processing社(ADP)が算出する雇用に関する指標です。
2006年からADPは、約50万社の顧客(U.S. business clients)を対象に毎月雇用者数の動向を調査ています。ADP雇用統計は、毎月の米雇用統計の非農業部門雇用者数が発表される2営業日前に公表されため、本指標を非農業部門雇用者数の先行指標として注目されています。
米国時間の9月2日に8月のADP雇用統計が公表されました。2020年8月は、+42万8000人の増加にとどまりました。一方で、市場予想は+95万人の増加でしたので、予想を大きく下回る内容でした。
ADP雇用統計では、新型コロナウイルスの感染拡大とロックダウンに伴い、4月に2000万の雇用が失われましたが、それ以降でまだ半分程度しか回復していません。新型コロナウイルスの米国労働市場への爪痕はまだ残っている状況です。
S&P500指数は2020年9月1日時点で、年初来約+9.48%と3月の下落を上回る上昇をしており、銘柄ごとに差はあるものの、市場全体としては新型コロナウイルスの影響を乗り越えたように見えます。一方で、労働市場においては回復が予想より遅れていることになります。
因みに、雇用統計を読む際のポイントは、アメリカの雇用が流動的であることを踏まえることです。米国では景気の見通しに基づき雇用調整が簡単に行われるため、先行指標としての意味を持ちます。
米国と日本で労働市場の流動性が違うため、雇用統計が先行指標(米国)で使われるか、遅行指標(日本)として使われるか変わります。興味深いところです。
今週金曜日には、非農業部門雇用者数の増減が発表されますが、ADP雇用統計と似た結果になる可能性が高いです。
ファンダメンタルズの観点からは、本格回復までもう少し時間がかかると予想されます。