気になる建機レンタル銘柄 (2020.09.03)

9月 4, 2020 気になる
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建設機械のレンタル業界についてご要望を頂戴したので、調べてみました。

建設機械とはブルドーザーやショベルカーなど土木・建築の作業・工事に使われる機械の総称ですが、建機レンタル業者とはその建設機械を建設業者に対してレンタルをする業者の事です。

2019年までの過去10年間で建機のレンタル市場は年率9.4%の売上成長、過去5年間では成長率は緩やかになり年率4.3%で市場が拡大してきました。ここで留意すべき点は、一般的に、建機レンタル事業は、建設投資動向により収益が大きく左右されることです。そして、その建設投資動向は、民間設備投資や国及び地方公共団体の公共事業予算に影響を受けます。

また、業績に季節変動性があります。公共投資については予算決定から実際の工事着工まで概ね5か月から6か月のタイムラグが生じるため、毎期9月ごろから3月にかけて最盛期を迎え、この期間に建機のレンタル需要が最も大きくなるというトレンドがあります。

(念のためですが、過去の売上高推移は新型コロナウイルスの感染拡大とロックダウンに伴う影響を含んでいません。)

(出所:経済産業省 特定サービス産業動態統計調査、Finepresa)

売上高のシェア順で上位から見ていくと以下の通りです。

  • アクティオ:建機レンタル業界では最大手ですが、アクティオホールディングスが100%株主となっており、上場されていません。
  • カナモト <証券コード:9678>: 建設関連90%、その他10%、時価総額905億円(2020年9月3日時点)
  • 西尾レントオール <証券コード:9699>: レンタル関連97%、その他3%、時価総額673億円(2020年9月3日時点)
  • ジェコス<証券コード:9991>: 仮設鋼材88%、建設機械12%。時価総額332億円(2020年9月3日時点)。

アクティオは上場株ではないので、カナモト<9678>、西尾レントオール<9699>、ジェコス<9991>が投資対象になりえますが、ジェコスは建設機械の売上高に占める割合は12%なので、建設機械のレンタル業界の今後の動向に投資する場合は、以下の2銘柄が有力な候補になるかと思われます。

  • カナモト<9678>
  • 西尾レントオール<9699>

2つの銘柄の年初来(年初を1として比較)のパフォーマンスをグラフにしてみると以下の通りです。

2020年3月には2銘柄ともに年初来で35%ほど下落、しかしその後の回復は2銘柄で大きな差があります。これは西尾レントオールがイベント関連セグメントからの売上が大きいことに起因しているように見えます。3月以降のイベント自粛が売り上げに影響を与えています。

また、2社の有価証券報告書を見比べていて興味深かったのは、両者とも東京オリンピックのインフラ整備に触れているものの、リニア中央新幹線のインフラ整備についてはカナモト<9678>のみが経営戦略の中で触れていました。

投資の機会としては2つの可能性があるように見えます。

1つは、新型コロナウイルスのワクチンが開発され、イベント需要が復活するというシナリオです。その場合、西尾レントオールの株価は急速にカナモトに追いつき、共に上昇をすると考えられます。そうすると、このシナリオでは、西尾レントオールに妙味があります。例えば、9月3日のニュースですが、米疾病対策センター(CDC)は全米の自治体や州の公衆衛生当局に対し、早ければ10月下旬にも新型コロナウイルスのワクチンを配布する準備に入るよう指示したことを確認しています。

もう一つは、リニア中央新幹線に伴う中長期的な需要です。カナモトが経営計画で触れていますので、当該ニーズに対してより適切なポジショニングができている可能性があります。この場合、カナモトに競争優位があり、投資妙味があります。

以上、ご参考になれば幸いです。

投稿者: CFA

米国証券アナリスト、日本証券アナリスト検定会員。また、経営学修士号(MBA)保持者ならびにベータ・ガンマ・シグマ所属。 仕事でも色々なことを考えるので、投資にあたって面白いと思った情報を継続的にご紹介します。皆様のご投資の参考になればと思い、Finepresa(フィネプレサ)を立ち上げました。 よろしくお願い致します。