9月4日、ソフトバンクグループ<9984>がここ数週間の米国株の上昇局面で、オプション市場に多額の資金を投じたとの報道がありました。
ソフトバンクの孫正義会長兼社長は8月、投資運用会社を設立したと発表しました。大規模な資産売却プログラムで得た余剰資金を今度は流動性の高い公開銘柄に投資するとのことで、SECへの提出資料によると、アマゾン、ネットフリックス、テスラ、マイクロソフト、アルファベット(グーグル)に合計で約40億ドル(約4200億円)投資しているとのことです。
そして興味深いのはここからで、米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)によると、ソフトバンクは投資している銘柄のコールオプションをほぼ同額取得し、約500億ドル(約5.2兆円)分の株式購入相当するエクスポージャーとのことです。
相変わらず凄まじいです。
コールオプションとは、ある商品を将来のある期日までに、その時の市場価格に関係なくあらかじめ決められた特定の価格(=権利行使価格)で買う権利のことですが、ソフトバンクは米国個別株(ハイテク銘柄)のコールオプションを大量に購入することで、米国ハイテク株が上昇すると通常の株式に投資するよりもレバレッジを効かせて価値が急速に上昇する取引をしているとのことです。
下のグラフをご覧ください。これは、米国のオプション取引に関する統計ですが、ご覧いただきたいのは赤色の線で、米国個別株を対象原資産とするコールオプションの取引量です。この取引量が直近かなり増加しています。今、市場ではこれはソフトバンクによる大量購入が背景ではないかと考えられています。
ゴールドマン・サックスによると、過去2週間の米国個別株を対象原資産とするコールオプションの一日当たりの取引量(想定元本)は、3350億ドル(約37兆円)で、これは2017年から2019年までの平均水準の3倍以上とのことです。個人投資家のオプション取引が米国で人気が出てきていますが、個人投資家による投資だけでは説明できないとのことでした。
先程の約5.2兆円分のソフトバンクによる投資はエクスポージャーベースですので、想定元本ベースに直すとその数倍になると予想され、上記の数字の多くが説明されることになります。
ソフトバンクがこれだけコールオプションを買うと、彼らにエクイティデリバティブを提供している投資銀行は、裏で(ソフトバンクへの支払いに備えて)デルタヘッジを行うことになり、対象原資産となっている個別株を市場に買いに行くことになります。これが、NASDAQ指数を押し上げた要因の一つになっているのではないかということです。
デリバティブにフォーカスを当てた米国のヘッジファンドのベテランからは、「20年間でこのような大きな取引のフローを見たことがない」との声も上がっています。「非常に危険な賭け」だとの声も。ソフトバンクによるコールオプションに関するフローは引き続きまだあるのではないかともいわれています。
NASDAQ指数の動向に関して興味深いニュースです。
ご参考になれば幸いです。