ファイナンスの理論において、市場が効率的であることを前提としている。
効率的市場仮説といった時には、以下の3つのレベルがあるといわれている。
ウィーク・フォームの効率性
将来の証券価格の変動が過去の証券価格の変動あるいはパターンから独立であるような市場。つまり、チャートを描いて、今が買いとか今が売りといったテクニカル分析が運用結果として市場平均をアウトパフォームすることはないというレベル。
セミストロング・フォームの効率性
価格情報に限らず、すべての公開情報が即座に完全に証券価格に反映されるような市場。会計情報を用いて証券分析をする、ファンダメンタルズ分析でも運用結果として市場平均をアウトパフォームすることはないというレベル。
ストロング・フォームの効率性
公開情報に加え、インサイダー情報を含めて利用可能な情報が完全に証券価格に反映されているような市場。インサイダーでも市場平均をアウトパフォームすることはないというレベル。
ファイナンスの専門家の間では、テクニカル分析はあまり信じられていないが、ファンダメンタルズ分析の価値を見る人間は多い。現実の市場はウィーク・フォームの効率性を有するのではないかと考える専門家は多い。
なぜ効率的市場仮説の話をしているかというと、今日ご紹介するボリンジャーバンドは、テクニカル分析の指標の一つ。ウィーク・フォームの効率性を前提に置くと、この分析には意味がないことになるが、興味深い指標なので、ご紹介する。
ボリンジャーバンドは、統計学を応用したテクニカル指標のひとつ。移動平均線と標準偏差で構成されている。移動平均を表す線とその上下に値動きの幅を示す線を加えた指標で、価格の分布が正規分布に従うのであれば、価格の約68%が帯の中に収まるという幅を描いている。ボリンジャーバンドは、順張りや逆張り両方で使われることがあるテクニカル分析の指標であるが、興味深いのは、ボリンジャーバンドから日経平均株価を見ると、現在の水準は日次データでも月次データでも移動平均から大きく外れておらず、足元それほど割高感はないように見える点である。(ただ、割安でもない。)
下のグラフを参照。茶色(真ん中)が移動平均の水準で、赤が+1σの水準、緑が-1σの水準を表している。月次のグラフでは12か月で、日次のグラフでは、20営業日の移動期間で計算している。今回は逆張りのケースでのボリンジャーバンドの利用例である。逆張りの場合は+1σの赤色の線に触れたら(割高ということで)、その後下落と予想。また、-1σの緑色の線に触れたら(割安ということで)、その後上昇と予想。
足元の日経平均の水準は移動平均の水準に近く短期的には割高でも割安でもない可能性が示唆される。
昨日見たように、鉱工業生産指数でみると、日経平均の価格変動は実態からの乖離を起こし、割高に見えていた。私はファンダメンタルズのビューを支持するが、テクニカル分析も合わせて状況把握をしたい。
外資系証券会社のトレーダーも、テクニカル分析を完全に信じてはいないが、時々、需給に基づいた短期の切り口として眺めたりしている。
ご参考になれば幸いである。