気になる銀行による貸出の伸び

気になる銀行による貸出の伸び

15+

銀行・信金2020年5月の貸出平均残高は過去最高の伸び。特に都銀等の伸びが大きい。

日銀が2020年6月8日発表した5月の貸出・預金動向によると、銀行・信金計の貸出平残は前年比4.8%増(4月は2.9%増)。この5月の伸び率は統計公表開始来、過去最高。

新型コロナウイルスの感染拡大に伴う事業環境の急速な悪化で、企業の運転資金ニーズが高まり、政府・日銀の資金繰り支援策が融資増につながった格好。緊急時の対応が奏功していることが確認できる。

業態別では3メガバンクなどの都銀等の伸び率が6.6%と4月の3.4%よりさらに急速に増加。ただ、地銀や信金の貸出増加率より都銀等の貸出増加率が大きい状況が4月以降継続しており、大手行と取引の多い大企業向けの融資が活発だったと推測され、緊急時の経済対策の効果として気になる部分。

背景として、これまでの緩和的な金融政策の効果もあり、銀行による総与信の増加ペースについて、GDP対比でバブル期にみられたような過熱感が2020年4月に日銀から報告されている。4月に日銀が発表した「金融システムレポート」で項目ごとのヒートマップを確認すると以下の通り。

ヒートマップは、各種の⾦融活動指標のトレンドからの乖離度合いを⾊で識別することによって、1980 年代後半のバブル期にみられたような過熱感の有無を⽰すもの。これをみると、全 14 指標のうち 12 指標が過熱でも停滞でもない「緑」。⼀⽅、「不動産業向け貸出の対 GDP ⽐率」が過熱を⽰す「⾚」。また、今回は、前回レポート時点では「緑」だった「総与信・GDP ⽐率」が、1991 年初以来はじめて「⾚」へと転化

これは、直接的には分⺟に当たる GDP の動き(海外経済の減速に、消費税率引き上げや⾃然災害の影響が加わったことなどによる 2019 年 10〜12 ⽉期の⽐較的⼤幅な減少)によるものであるが、より本質的には分⼦に当たる総与信が、それ以前から趨勢的に、GDP 対⽐で⾼めの伸びを続けていたことが影響。言い換えると、経済成長より速いスピードで融資が提供されていることを表す。

日銀にとって、民間金融機関の①ミドルリスク企業向け貸出、②不動産賃貸業向け貸出、③⼤型 M&A 関連などレバレッジが⾼い案件向け貸出を中⼼に、脆弱性への注意は継続的に必要とのことであったが、仮に与信が緩くなっている場合には、マクロ経済にストレスがかかると上記領域でデフォルトが発生しやすいと推測される。社債への投資の際にも同様の視点は、重要。

気になるAI関連銘柄7社 (2020.06.07)

16+

気になる人工知能(AI)関連の銘柄は以下の通り。

一般的にAI関連銘柄で取り上げられる120銘柄から出発して、ファンダメンタルズがしっかりしていて、今後株価の上昇が期待できる新興企業を東証マザーズならびにJASDAQ市場を対象として抽出。

エルテス <3967> とALBERT <3906>ともに大変興味深い銘柄だが、若干割高感もあるので、エントリーポイントの価格に気を付けたい。シルバーエッグ・テクノロジー <3961>も同様。

特に、シルバーエッグ・テクノロジー <3961>は、2020年5月29日引け後、20年12月期第1四半期(1-3月)の連結決算を発表。大幅な増益となり、買い人気を集めた。第1四半期決算は、営業収益が前年同期比23.8%増の2億9000万円、営業利益が約3.3倍。営業収益が堅調に推移したことにより、人材関連費用や通信関連費用が増加したものの、大幅な増益に。

投資のタイミングの見極めも重要。

それぞれの2020年6月5日終値は以下の通り。

モルフォ<3653> 2,283

エルテス<3967> 1,844

シルバーエッグ・テクロノジー<3961> 1,975

ロゼッタ<6182> 3,690

ディジタルメディアプロフェッショナル<3652> 4,020

ALBERT <3906> 7,010

データセクション <3905> 669

シルバーエッグ・テクノロジー <3961>の週足チャートは以下の通り。

気になる5月の米国雇用統計

18+

2020年6月5日、5月の米国雇用統計が発表された。エコノミストの予想を遥かに上回って雇用状況が改善

米雇用統計とは、米国労働省が毎月発表する、米国の雇用情勢を調べた景気関連の経済指標。全米の企業や政府機関などに対してサンプル調査を行い、10数項目の統計を発表(失業率、非農業部門雇用者数、建設業雇用者数、製造業雇用者数、小売業雇用者数、金融機関雇用者数、週労働時間、平均時給など)。この統計の中でも非農業部門雇用者数失業率の2項目が投資家から特に注目されていて、FRBの金融政策にも大きな影響を与えると言われている。外国為替市場において、最大の経済指標の一つ。

米労働省によると、5月の非農業部門雇用者数は前月比250万人増加。一方で、エコノミスト予想の中央値は750万人の減少。ブルームバーグが調査したエコノミスト78人の中で最も楽観的な予測でも、80万人の減少予想。5月の雇用統計において失業率は1930年代の大恐慌以来の高水準である20%に接近すると予想されていたが、実際には13.3%に低下。78人のエコノミストたちが予想を外していることが大変興味深い。

なお、4月の雇用統計では非農業部門雇用者数が約2070万人減と、1930年代の大恐慌以降で最大の落ち込みを記録。それに伴い、4月の失業率は14.7%と戦後最悪。それが、5月の雇用統計では失業率が13.3%に低下。この13.3%という失業率は過去の標準から見ればなお非常に高水準であるものの、各国の拡張的な財政政策ならびに緩和的な金融政策を背景に世界経済への楽観的な見方が広がっている。

5月雇用統計を経て、(より一層のリスクオンへの)「転換点を迎えたのではないか」との声も。リスクオンムードの中、米国金利の上昇(国債価格の下落)、円安ドル高、リスク性資産である株や社債、原油価格の上昇継続か。

バンク・オブ・アメリカのデータによると、6月3日までの週は、社債ファンドに過去最高の300億ドル超の資金流入。そのうち、投資適格債券ファンドには、過去最高の208億ドルが流入。ハイイールド債ファンドにも102億ドルが流入。

また、ニューヨーク原油先物相場は4日続伸。OPECプラスが協調減産を1カ月延長する見通しとなったことに加え、米雇用統計が予想外に堅調ため。WTI原油先物7月限は5.7%高の1バレル=39.55ドルと、3月6日以来の高値で終了。週間でも上昇し、6週連騰に。

足元のマーケットの大多数の予想通りリスクオンムードが継続するのか、それとも新型コロナウイルスの第2波のリスクが重しとなるのか、もしくは、米中摩擦激化のリスクが顕在化するのか、判断が必要な局面。

個人的には、マーケットの回復する速度が速すぎると心配。マーケットは今後リスクシナリオの変化に敏感になる可能性がある。ヘッジ銘柄を保有しつつ、今後の若干の調整局面に備えて、守りを固くしておき、来る調整局面ではファンダメンタルズ対比で妙味がある銘柄についてしっかりと投資をしたいところか。

気になる中国企業の上場規則厳格化呼び掛け

19+

ポンペオ米国務長官は4日、声明で中国企業の「詐欺的な」会計慣行について米投資家に警告。そうした企業の上場規則を厳格化する米ナスダックの最近の決定は世界の取引所のモデルになるべきだとの見解を示した。

そのあとも厳しい言葉が続く。「米投資家は、米企業と同じ規則を順守しない企業に伴う隠された不当なリスクにさらされるべきではない」と指摘。「ナスダックの措置は米国の他の取引所や世界の取引所にとってモデルとなるべきだ」と語った。また「全ての上場企業が国際的な会計・監査基準を確実に順守することを監査法人に義務付けたナスダックを称賛する」と述べた。

米国で何があったかあまり日本で報道されていないので、簡単な経緯説明。

中国版スターバックスと称されるラッキンコーヒー(瑞幸珈琲)は2017年創業。2019年5月17日、米ナスダック市場に上場。17ドルで売り出された同社株により、5億6100万ドル(約600億円)を調達した。同社株は一時25.96ドルの高値をつけ、時価総額は60億ドル近くまで膨らんだ。当時、同社の創業者のJenny Zhiya Qian(銭治亜)は発行株式の17%近くを保有、彼女の資産額は一時的に10億ドル(約1100億円)を突破。

一方で、ラッキンコーヒーは、アメリカの投資会社から不正会計を指摘されていた。ラッキン側が調査結果を公表したのは2020年4月2日。2019年の売上高の大半に当たる約22億元(約330億円)の水増しが発覚。これを受けて、2日のラッキンの株価は8割近く下落。2020年4月7日からはラッキン株は売買停止に。2020年5月12日には、Zhiya Qian最高経営責任者(CEO)と、Jian Liu最高執行責任者(COO)を解雇。2020年5月19日、ラッキンコーヒーは米ナスダック市場を運営するナスダックから上場廃止の通達を受けたと明らかに。ラッキンの不服申し立てについての結論が出るまで、同社は上場廃止とならない。米ナスダックでの売買は5月20日に再開。

中国企業による詐欺的なIPOでは、日本にもいくつもケースがある。例えば、アジア・メディアや新華ファイナンスなど。

アジア・メディアは2007年4月に東証マザーズに上場。上場時の時価総額は、362億円。しかしながら、実態の良く分からない会社。CEOが子会社の預金約16億円を私的に流用し、2007年8月に上場廃止に(中国でも同様の手口を行っていた模様)。ほぼ詐欺的に東証に上場し、当該IPO銘柄を高値で買った日本の投資家が中国系企業の創業者たちにお金を巻き上げられてきた格好。

新華ファイナンスは1999年、香港で創業。中国の国営通信社、新華社の関連会社と資本提携し、金融情報サービスのブランドに「新華」の名称を使用する権利を取得。新華ファイナンスは、2004年10月に東証マザーズに上場。その後、2005年7月には米ナスダックにADR(米国預託証券)を上場。これが後に命取りに。
創業者で元CEO(最高経営責任者)のブッシュを含む元役員3人が、在任中のインサイダー取引、粉飾決算などの容疑で米国の裁判所に起訴された。米国での起訴は、ADRに関して米証券取引委員会(SEC)に提出した有価証券報告書に虚偽があり、SECおよび投資家を騙したことが根拠。ブッシュならびに共同創業者のペリーノは同じ手口で持ち株の不正売却を繰り返した。米司法省によると一連の不正により、3人は5000万ドル(約40億5000万円)以上の利益を得たという。後に、被告は司法取引にサイン。新華ファイナンスは上場後、一時は投資家の高い関心を集め、株価は05年3月に43万9000円(同年9月の株式分割考慮後は14万6333円)を付けた。しかし、その後株価は低迷し、最高値の1%未満。2018 年 6 月 7 日に「新華ファイナンス ジャパン株式会社」から「ビートホールディングス ジャパン株式会社」に変更。

正しいディスクロージャー(情報開示)こそがが投資の基盤。ポンペオ米国務長官に強く賛成。

気になるETFを活用した米国債券市場への投資

18+

投資というと株式のイメージが強いが、長期的な資産形成を考えた時、債券投資も非常に重要。個人投資家の場合は、年齢を重ねるにつれ、経済的なリスク許容度を下げていく必要があるので、より重要になっていく。

投資ポートフォリオを全て株式に投資することは時間分散が効く長期投資の場合でもリスクが高くなりすぎる(変動幅が大きくなるすぎる)ので、一部を債券投資やヘッジ取引に回すことは、中長期的な運用を考えた場合には非常に重要ということになる。

債券は、金利が下がると、価格が上がるという性質がポイント。景気後退や外因性のショック(例:新型コロナウィルス)などで経済成長に陰りが出てくると、金融政策は一般に緩和的になり、金利は低下する。

債券投資をしておくと、通常の時はインカムゲイン(クーポン収入)を取りながら、景気後退や急な減速期には、債券価格の上昇となり、キャピタルゲインが生じるため、投資家のポートフォリオにとって一種保険のようになる。

逆に、景気に過熱感が出て、労働市場がひっ迫し、賃金上昇等が発生すると、インフレ懸念から金利上昇、債券価格の下落となる。このため、株と債券は逆相関になることが多いと一般的にファイナンスでは教えられる。

もちろん例外もあり、金融相場(緩和的な金融政策に支えられた相場)において、株と債券が両方とも価格上昇する場合では、相関は正となる。(同じように動く。)それでも、この逆相関の性質は、市場が短期で大きく動いた場合に機能することが多く、債券(国債)投資の魅力となっている。国債投資を考えるのにあたり、一般的に「インカムゲインの水準+金利の低下」がポイント。通貨が異なれば、金利の動き方は異なるため、どの金利の動きを予想するかも含めて、検討することが重要。

日本の投資家の方々にとってなじみのある金利は、一般的に円金利か米国金利かと推測されるが、米国金利のほうが長短金利差があり、為替ヘッジコスト考慮後でも(円ベースで)魅力的なインカムゲインの水準となることが多い。

また、債券投資でも、国債とは異なる振る舞いをする種類の債券もある。例えば、ハイイールド債である。格付が投資適格未満である債券をハイイールド債(ジャンク債)というが、クレジットリスク(信用リスク)分だけインカムゲインが高い。その結果、ハイイールド債では、「インカムゲインの水準+金利の低下+クレジットスプレッドの低下」がポイント。

ただ、ハイイールド債投資が難しいのは、景気後退などで金利が低下すると、倒産確率の上昇からクレジットスプレッドがより一層拡大することが多く、ハイイールド債の価格は(国債のように上昇するのではなく)下落する傾向がある。このため、国債と異なり、インカム水準は高くなるが、ポートフォリオの中で「保険」としての意味合いはほとんどなくなる。ご注意を。

言い換えると、「保険」の国債、「攻め」のハイイールド債。これらに共通するのは、(水準は違うが)どちらもポートフォリオにインカムゲインをもたらすこと。

日本の個人投資家にとって、米国金利(米国債)や米国ハイイールド債のポートフォリオに比較的容易に分散投資する方法としては以下のものがある。

為替リスクをヘッジしないという債券型のETFもあるが、為替の変動で折角のインカムゲインがあっという間になくなってしまうことがあるので、債券投資では為替ヘッジをすることが多い。

米国国債: iシェアーズ・コア 米国債7-10年(為替ヘッジあり) (1482)

米国ハイイールド社債: iシェアーズ 米ドル建ハイイールド社債ETF(為替ヘッジあり) (1497)

足元、米国政府の拡張的な財政政策に基づく巨額の経済刺激策と、FRBの金融政策のシフトの兆候を踏まえて、米国の長期金利は上昇、長期債の価格は下落。これは、経済見通しの安定化とFRBが短期金利(政策金利)を引き続き低く抑える一方、長期債のセグメントではFRBは介入に対してより消極的になるのではないかという思惑に基づく。

米国債の異なる償還日の債券の残存年限と利回りを描いたグラフをイールドカーブというが、上記の理由でイールドカーブがより立ってくる(スティープ化)という見通し。

このため、足元では米国の7-10年の国債に連動する1482は下落。一方で、リスクセンチメントの改善から、攻めとなる1497は上昇。

なお、チャートを見る際にご注意いただきたいのは、通常のグラフ(ETFの価格)はクーポン支払後のキャピタル損益のみのもので(プライスリターン)、トータルリターン(プライスリターンとインカムリターンの合計)にはなっていないこと。特に債券投資ではプライスリターンはそれほどなく、ほぼ横ばいにみえるが、投資家にはインカムゲインが別途手元に累積している。このため、過去のパフォーマンスを見るときトータルリターンを確認することが、債券投資では特に重要。

トータルリターンの計算はそれほど難しくはないのだが、必要な情報を集めて自分で計算するのは少し面倒。

上記のようなiシェアーズのETFであれば、BlackRockのページに行くと、トータルリターンが簡単に確認できる。

Blackrock.comの日本語サイト -> 「ファンド・ETF情報」 -> 「東証上場iシェアーズETF」で、それぞれの証券コードを探すとファンドの実績を確認できる。例えば、1497であれば、プライスリターンでは、以下のようなグラフで、2019年の間はほぼ横ばいに見える。しかし、インカムリターンを含めたトータルリターンでは下の表のように2019年には10.97%のリターンが出ていることがわかる。つまり、グラフでは2019年はほぼ横ばいだが、その外でインカムゲイン(クーポン収入)が10%近くあったことになる。

新型コロナウイルス第2波の可能性や、米中摩擦激化の可能性から(今しばらく企業の倒産確率が高くなってくる可能性があり)、今しばらくハイイールド債投資には慎重であったほうがいいと思うが、この先見通しが良くなれば、その高いインカムゲインの水準から「攻め」に使える可能性も。

気になる原油価格 (2020.06.03)

19+

6月3日の原油先物は上昇。ただ、WTI連動ETFでの原油への投資は注意が必要。コンタンゴにご用心。

原油価格は新型コロナの発生地である中国の景気改善や他国の経済活動再開を受け、ここ数週間に4月の安値水準から大幅に上昇。 

主要産油国が減産期間を延長するとの期待や新型コロナウイルス危機からの回復が燃料需要を支えるとの見方が背景。

米WTI先物は6月3日、一時1バレル=38ドルを超えて上昇。(その後、下落。)なお、前日も3.9%の上昇。北海ブレント先物も一時3カ月ぶりに40ドル台を超えた。

これまでの報道によると、石油輸出国機構とロシアなど非加盟産油国で構成するOPECプラスは日量970万バレルの減産合意について、6月4日にも開催が見込まれるオンライン会合で7月か8月まで延長する可能性がある。

今後の原油価格に影響を与える可能性が高いファクターは、需要サイドでは、①新型コロナウイルスの第2波の有無と実体経済回復のスピード(財政政策並びに金融政策の下支えの規模とスケジュール)、②米中間の摩擦激化の有無、そして、供給サイドでは、③今後の減産スケジュールなどに注意が必要。

なお、足元、原油先物の直近限月の価格がマイナス40.32をつけた4月20日以前からWTI連動ETFに投資をしていた我慢強い投資家であっても、残念ながら思ったほどパフォーマンスが出ていないと思われる。

これは、4月20日周辺で先物のロール(近い限月の売却と、次以降の限月の購入の売買の組み合わせ)を運用会社がETF内で行った際、売買価格差(コンタンゴ:先の限月のほうが近い限月より高いこと。4月20日周辺は凄まじいコンタンゴ。結果、ETF1株あたりの保有先物枚数の減少に。)により、きつく損失が出ている可能性がある。今回の場合、特にこれが大きい。

このため、原油市場の動向をそれなりに予想できていたとしても、ロールの際のETF保有先物枚数の減少で、ETF価格は原油価格のリバウンドを十分に獲得できないことがある。「あれ?」と思うことがあると思うので、ご注意を。以下の最初の2つのグラフを底からの反発の割合を見比べると差異は明白。

また、万一のマイナス先物価格再来の可能性に備え、ETF運用会社においても、直近限月ではなく、先の限月を使っていると想定され、今後も直近限月の原油先物市場のリバウンドとWTI連動ETFのパフォーマンスにも多少なりとも差異が出てくると思われる。

なお、本日6月3日夜(日本時間)にEIAより米国原油在庫量が発表された。米国の原油在庫量は予想を大きく下回り、減少。4日にも主要産油国による減産期間の延長が予想されていることに加えて、テクニカル(需給)の観点からは追い風。

気になるAI/ビッグデータ関連銘柄

17+

5月27日に国家戦略特別区域法改正が参院本会議で可決され、成立。AIやビッグデータを活用したスーパーシティ構想が動き出した。

当該法改正では、複数の主体からデータを収集・整理し、AIやビッグデータを積極的に活用した先端的なサービスの開発・実現を支えるデータ連携基盤(都市OS)の整備事業を法定化。

国が定めた安全基準等を守ることを前提に、同事業の実施主体が国、自治体等に対し、その保有するデータの提供を求めることができることとなる。APIのオープン化を求めつつ、データ駆動型社会の先駆例となるような良質なデータの集積加速を狙う。下図を参照。

高齢者の通院対策、総合的な地域包括ケアの実現、多文化共生社会の実現など、様々な社会的課題の解決に、データ連携基盤を介して、AIやビックデータを活用した最先端技術を実装することを目指す。

AI関連銘柄やビッグデータ関連銘柄は以下の通り。

なお、足元、東証マザーズなど新興企業の株に過熱感があるので、銘柄及び投資のタイミングの選択は慎重に行うことが必要。ご注意を。

ALBERT(3906、東マ): AI、ディープラーニング技術活用したビッグデータ分析主体。自社開発のアルゴリズムに強み。

ブレインパッド(3655、東1): AI活用した企業データ分析コンサルが主。

サイオス(3744、東2): オープンソースやクラウド製品を開発・販売。システム障害回避ソフトが柱。AI開発に意欲。

ホットリンク(3680、東マ): 訪日客対応のマーケティング支援、SNS広告、ビッグデータ販売を展開。

<国家戦略特別区域法改正>

<Albert(3906)の産業別売上構成とパートナー>

2019年12月期決算説明資料より抜粋。重点顧客で、金融の割合が堅調に増えてきている点が興味深い。今後目指す姿でも、金融の割合はもっと増えると予想。

気になる東証マザーズ指数とその構成銘柄

18+

新興企業の成長力評価の動きが強まっている。大変興味深い相場。

6月1日の東京株式市場において、新興企業株を反映する東証マザーズ指数は1000ポイントを上回った。2018年12月以来の大台越え。

マザーズ指数の急回復には、新型コロナウイルスのワクチン開発を進めるアンジェスの4月以降の急騰が大きく貢献。他にも、時価総額の大きいメルカリやそーせいグループ、フリー、メドレーも押し上げに貢献。3月安値からの上昇率はなんと約9割。

東証マザーズ指数の業種(東証33業種)毎の時価ウェイトは、情報・通信業が約48%、医薬品が約22%、サービス業が約17%と、この3つの業種で指数のウェイトの85%以上。

なお、サービス業には、時価総額が1000億円を超えるミクシィ(2121)や弁護士ドットコム(6027)の他、もう少し小さいロゼッタ(6182)、アスカネット(2438)、ネクストーン(7094)、ウェルビー(6556)、総医研ホールディングス(2385)、ケアネット(2150)などの新興企業が含まれる。

東証マザーズ市場は個人投資家の多くが参加する市場と言われている。短期の資金が出入りしやすい上、東証マザーズ指数はこれまでの2カ月近くほぼ一本調子で上昇し、過熱感がある。

ここから先、特にファンダメンタル分析をしっかりと行い、個別銘柄を丁寧に拾っていくことが重要な局面か。

気になる景気見通し

20+

安倍政権は27日に非常に大型の第二次補正予算案を閣議決定。海外でも今回の新型コロナウイルスを起因とする経済危機に政府が積極的な財政出動で対応する流れに。

これまで経済理論では異端とされていたMMT理論(現代貨幣理論)だが、今年2020年の米国大統領選に向けて、昨年来米国においても度々取り上げられてきた。

国債発行に基づく政府支出がインフレ率に影響するという事実を踏まえつつ、変動相場制で自国通貨を有している政府は、税収ではなく、インフレ率に基づいて財政支出を調整すべきだという新たな財政規律を主張する理論。

例えば、日本は変動相場制を導入しており、自国通貨である日本円を持っているが、このような国では(財政赤字を気にすることなく)インフレ率を適宜チェックしながらドシドシ財政出動を調整したら良いのではないかという理論。

一方で、財政出動が積極的すぎて景気が熱くなりすぎたら、財政出動を減らし、国債発行量を増やすことで流通貨幣を回収したり(貨幣の価値を上げたり)、増税する(総需要を減少させる)ことでブレーキを踏み、インフレを防ぐことができるという主張。

言い換えると、財政赤字拡大は、インフレに繋がらなければ問題がないという、積極財政を支持する。

2018年頃から米国で注目を集め始めたが、これまで大多数のエコノミストの反対にあい、実現は不可能と思われていた。昨今の新型コロナウイルスに伴う景気後退に対応するため、緊縮財政の議論は消滅し、否が応でも積極的な財政政策が必要な局面に。

今後、積極財政に伴い需要が作られる一方、緩和的な金融政策で貨幣の供給は増えていく方向。経済成長という意味では、政府ならびに中央銀行ともにフルアクセルで踏み込んでいる。そして、上記のような(異端ではあるが期待感の大きい)経済理論も政府の背中を押す格好。

足元の日本や米国のように、積極財政と緩和的な金融政策というポリシーミックスの場合、労働市場が再度引き締まり、インフレ率が上昇し始めるまでは、中期的には景気は回復する方向性と言える。

一方で、米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は5月29日の講演で「新型コロナウイルスの感染第2波のリスクは明白にある。経済再生が大きく遅れかねない」と強い懸念を示した。米経済は段階的に経済活動を再開しつつあるが「感染第2波が起きれば米経済の試練となる」と言及。生活者が不安を抱えたままなら「景気回復は一段と弱まり、経済再生の道のりも極めて長くなる」と長期停滞に陥る懸念を表明。ただ、5月17日には「感染第2波が来ないと仮定した場合、経済は年後半を通して着実に回復するだろう」と言及していることも米国経済の先行きを見通す上で参考に。パウエル議長は「米経済の完全復活には国民が十分な信頼感を持つことが必要になろう。それにはワクチンの出現を待たなくてはならないかもしれない」とも語っている。

まとめると、①「感染第2波」が起きれば、米経済の試練。景気回復は一段と弱まり、経済再生の道のりも極めて長くなる。②一方で、「感染第2波」が来なければ、米国経済は年後半を通して着実に回復。③そして、「感染第2波」の可能性を見通すのにあたり、ワクチンの出現も重要な要素に。

「感染第2波」は経済的なものではなく、感染症の伝播メカニズムなので、投資にあたっては慎重なリスク管理が必要な局面。米中の摩擦激化も追加的なリスクシナリオ。

Next Notes NYダウ・ベア・ドルヘッジETN(2041)をポートフォリオに一部組み込むことで、アメリカでの「感染第2波」のリスクヘッジが有効か。なお、2041はダウ指数が下落すると時価が上昇する国内ETFで、国内株式のように売買可能。

気になる楽天経済圏―楽天 (証券コード:4755)

21+

成長領域の拡大ならびに楽天経済圏のグローバル化へ強い決意を感じさせる楽天(4755)。

本日、2020年5月30日の報道によると、楽天は楽天バンクアメリカ設立の再申請を行った模様。

昨年2019年7月26日に、楽天は米国で銀行業務を開始するため、楽天カードが全額出資する子会社「楽天バンクアメリカ」の設立計画を発表。(楽天グループでは国内事業においても通常とは逆で銀行がカード会社の子会社。)米国での事業内容は、クレジットカードの発行や加盟店契約業務に加え、無担保個人融資や中小企業への事業融資、預金受け入れも行う内容。資本金は4億ドル(約430億円)で、ユタ州で産業銀行の認可取得を目指していたが、2020年3月に米連邦預金保険公社(FDIC)への申請をいったん取り下げていた。

楽天の2019年12月末までの会計年度(第23期)では、グループ全体の売上高は約1.3兆円であったが、そのうち、楽天カードの売上は、約2,298億で、前年度比約23%増の成長。国内の楽天カード会員基盤の拡大に伴うショッピング取扱高やリボ残高が伸長し、売上収益及び利益の増加に貢献した格好。

楽天バンクアメリカの親会社となる楽天カードの資本金は、2019年12月末時点で約193億円。一方、今回の楽天バンクアメリカの資本金が約430億円になるとすると、資本金という意味では親会社である楽天カードの倍以上。楽天のフィンテック事業は、堅調に成長を続けているが、その中でも規模と成長性両面で牽引しているのが、楽天カード。

今回、その米国子会社の規模を考えた時、楽天フィンテック事業の米国進出への強い意気込みを感じさせる。

直近の楽天グループの海外売上高比率は約20%。上昇の余地は大いにある可能性。2016年の欧州ECモール事業の抜本的見直しなど海外進出で苦戦が続いているインターネットサービスセグメントではなく、フィンテックセグメントでの進出を狙っている模様。

フィンテック事業では、楽天は2017年にヨーロッパでの商業銀行業務を開始。2019年7月には台湾における銀行業認可を取得済み。そして、今回の米国進出。

楽天グループの今後の継続的な成長を考えた時、海外進出はキーになる。

なお、楽天カードにおいては、主に個人顧客を対象とし、また、運転資金の調達を債権流動化と金融機関からの借入金等により賄っていることから、経済環境が悪化し、消費低迷による借入需要の減退、失業率の上昇による自己破産又は多重債務者の増加等が生じた場合、金融市場の情勢変化による金融機関の与信方針の変更があった場合、楽天グループの信用状態が悪化した場合等には、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性がある。また、貸倒リスクを軽減するための与信管理システムの維持・運営や、債権回収のノウハウを持つ人材の確保に重大な問題が生じた場合、サービス及び経営成績に支障が生じる可能性がある。

これらは、米国でのカード事業展開でも同様と推測されるが、預金を受け入れるのでより安い安定的な米ドルでのファンディング(資金調達)が加わる格好。コロナ後の世界において、営業努力に加え、与信管理システムの維持・運営ならびに債権回収が米国進出にあたりさらに重要となると推測される。