気になる内閣府の景気ウォッチャー調査(2020年6月)

気になる内閣府の景気ウォッチャー調査(2020年6月)

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7月8日に、内閣府の景気ウォッチャー調査の結果が公表された。

「景気ウォッチャー調査」は、景気の動向を示す指標の一つ。より迅速、的確に把握するため、内閣府が毎月発表。全国12地域を対象に、百貨店・スーパーマーケット・コンビニなどの小売店やレジャー業界で働く人、タクシー運転手等を含む、景気に敏感な職種の約2000人にインタビューし、調査結果を集計・分析して発表。

現況を示す現状判断DI、2~3カ月先の見通しを示す先行き判断DIを発表。

DIの数値は50が横ばいを表し、これを上回ると「景気が良い」、下回ると「景気が悪い」と感じる人が多いことを示す。

6月の景気の現状を表す指数は前の月から大きく上昇し、統計が比較できる範囲で最大の上げ幅。前の月を23.3ポイント上回って38.8となり、統計が比較できる2002年以降で最大の上げ幅。緊急事態宣言が解除されて、飲食店などが営業を再開したためで、2か月連続の上昇。景気の先行きを示す指数についても、前の月を7.5ポイント上回る44.0に。

統計が開始された2002年からの先行き指数についてグラフを描いてみた。結果は以下の通り。先行きに関してDIの数字は3月のロックダウンが本格化する前の水準にほぼ戻ってきている。

先日ご紹介した総務省統計局の「週別消費支出の推移」と合わせてみると、ファンダメンタルズ景況感ならびに消費支出がが急ピッチで回復してきている事が確認できる。

引き続き今後の新型コロナウイルスの感染再拡大の懸念に依存するが、財政政策ならびに金融政策がフルアクセルの中、日本経済の堅調な回復というシナリオの方向性が、ファンダメンタルズの側面からも確認できる。

気になる2020年5月の家計調査(日本)

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2020年7月7日、2020年5月の家計調査が総務省統計局より発表された。結果は以下の通り。

勤労者世帯の実収入が前年同月比で実質9.8%増加したものの、消費支出は実質で16.2%の減少。特別定額給付金で国民一人当たり10万円が一部で支払われ、実収入の増加に貢献したものの、それらが消費には向かっておらず、消費支出が減っていることが確認された。

ただ、追加参考図表である週別消費支出も興味深い。以下の図を見ると、5月下旬に向かって対前年同期実質増減率の推移が急激に回復している様子が見える。

ロイター社の記事を見ると、「一方、これまで見てきたように、消費マインドの回復テンポが鈍く、日本経済全体の回復スピードも、従来の予想より緩慢になる可能性がある。」としているが、5月最終週は前年同期比で-1.7%程度まで回復している。給付金の支払のタイミング(5月末でまだ受給されていない方々)等を考えると、2020年6月の家計調査結果は意外に良いかもしれない。

日本の個人消費(対GDP比)は、2020年3月に54.7 %であったので、日本のGDPの約6割を占める個人消費がどのように推移していくか、また実体経済に回復が見られる場合、株は先行指標なので、回復プロセスを先取りすることが想定される。

足元、新型コロナウイルスの感染再拡大や第2波への懸念があるが、ワクチンが開発されるなどの契機を経て、金融緩和&財政出動の組み合わせによるフルアクセルでの日本経済の急回復という流れが想定される。

米ISM非製造業景況感指数が過去最大の改善幅や、7月6日の中国・上海総合指数の5.7%高の急伸などから、7月6日は概ねリスクオンのムードであったが、先行き不透明感からの短期的な調整局面で、選好する銘柄へしっかりと投資をしておきたい局面といえる。

気になる高島屋<8233>の四半期決算(2020年度第1四半期)

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本日、2020年7月6日高島屋の2020年度第1四半期の決算発表があった。

決算情報はこちら

損益計算書の概要は以下の通り。売上高が前年同期比で約半分となってしまい、販管費の削減に取り組んだが、削減幅は約1/3にとどまり、営業赤字になってしまっている。

資産の状況については、興味深い部分を抽出した。

売上高が半減したことに伴い、貸借対照表上、売掛金、買掛金とも減少し、それに伴い、現金が200億円程度減ってしまうところを、短期借入金360億円の増加と長期借入金81億円の増加とファイナンスをし、現金及び預金残高を前年同期比とほぼ同じ水準としている。360億円ほど増加した短期借入金の詳細によって、今後のキャッシュフローに影響を与える可能性がある。

本決算をベースにROA/ROEを計算すると、これまでの推移では、以下の通り。

ROAが低いことから、財務レバレッジ後のROEも低くなっている。収益性の低迷という観点からは、中長期的な課題を有している。

ただ、足元の新型コロナウイルス感染拡大の影響に伴い、バランスシートが強烈に傷んでいるかというと、そうでもなく、日本経済がしっかりとした回復期に向かっていくことができればこれまでのような収益性までは戻れるようなバランスシートになっているように見える。

新型コロナウイルスのワクチン開発や第2波の有無について見通しが立ってくればバリュー投資として面白い銘柄。

気になるモバイル空間統計

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オルタナティブデータとは、政府や企業が公式に発表する統計データや決算データとは異なり、IoT(Internet of Things)機器や衛星画像、SNS(Social Network Service)などから得られる非伝統的なデータのこと。こういったオルタナティブデータを活用することで公式の統計データが出る前に状況を把握、より有効な投資判断や経営判断につなげられる可能性がある一方、オルタナティブデータの活用にはデータサイエンティストが求められるということをご紹介した。

今日はモバイル空間統計をご紹介したい。携帯電話ネットワーク(例:NTTドコモ)は電話やメールなどをいつでもどこでも利用できるように、各基地局のエリアごとに所在する携帯電話を周期的に把握。ドコモ・インサイトマーケティングでは、この仕組みを利用して携帯電話の台数を集計し、地域ごとにドコモの普及率を加味することで人口を推計。モバイル空間統計として提供。

上記リンク先のページの真ん中部分にリアルタイムデータが表示されている。

モバイル空間統計では、「性別」「年代」「居住エリア」「国・地域」などの切り口から人口を分析することができ、エリアの特徴(分布)や人々の動き(移動)を、時間帯ごと(推移)に継続して把握できる。このため、非常に興味深いマーケティングデータとなりうる。

どのようなデータがほぼリアルタイムで見えるかご参考資料は以下の通り。2020年7月5日(日)11時台のデータ。

渋谷駅周辺の人出は、前年対比で60%近くまで戻っていることが分かる。

渋谷駅周辺はやはり(イメージ通り)30台未満の女性が多いことが分かる。

一方で、興味深いのは豊洲駅周辺。もう少し若い世代が多いかと思っていたが、40歳台の男女が多い。

こういった様々な切り口のデータを踏まえつつ、より有効なマーケティングを展開したり、消費動向をより頻繁に予測できる可能性がある。

ただ、プライシングがかなりお高いのがネック。以下はプライシングの一例。

以前ご紹介したとおり、2020年5月27日に国家戦略特別区域法改正が参院本会議で可決、成立したが、今後、AIやビッグデータを積極的に活用した先端的なサービスの開発・実現を支えるデータ連携基盤(都市OS)の整備事業がより進み、データ連携基盤が整備され、サービスアプリケーションへ標準APIを通じたデータ提供がなされることが期待される。いかにデータを安価に提供できるかが一つのポイントになると思われる。

気になる確定拠出年金での債券投資

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個人型確定拠出年金の運用をされている方もいると思うので、債券のアロケーションで候補となりうるファンドのうち、たわらノーロード 国内債券たわらノーロード 先進国債券<為替ヘッジあり>を比較する。

まずそれぞれのファンドの概略は以下の通り。

たわらノーロード 国内債券:
主としてわが国の公社債に実質的に投資し、NOMURA-BPI総合に連動する投資成果をめざして運用を行う。

たわらノーロード 先進国債券<為替ヘッジあり>:
主として海外の公社債に実質的に投資し、FTSE世界国債インデックス(除く日本、円ベース、為替ヘッジあり)の動きに連動する投資成果をめざして運用を行う。実質外貨建資産については、原則として対円での為替フルヘッジを行う。

この2つのファンドのベンチマークの共通点は国債が主な投資対象。

相違点は、たわらノーロード 国内債券が日本の国債の金利動向に主に影響を受ける一方、たわらノーロード 先進国債券<為替ヘッジあり>は為替リスクをヘッジしつつ、海外の国債の金利動向に影響を受ける

これまでのパフォーマンスを並べて描いてみると以下の通り。青い線が月次のリターンを表し、赤い線が累積パフォーマンスを表している。

2つのファンドの累積パフォーマンス(赤い線)を見比べてみると、2020年2月以降のパフォーマンスの出方がかなり異なっていることが分かる。

新型コロナウイルス感染拡大を受けて、世界の中央銀行が流動性供給にしっかりと取り組む中、金利水準の低下余地のある米国では、マーケットに非常に大きなストレスがかかった2月中旬から3月中旬にかけて10年金利は約1%程度低下し、米国債価格の上昇という本来の債券の資産クラスとしての機能を果たしたが、日本ではすでにマイナス金利となっており、イールド・カーブ・コントロールが導入されているため、同時期において金利低下幅は約0.10%であり、金利低下に伴う債券の価格情報はほとんどなかった。

「攻めの株式と守りの債券」と考えたとき、金利低下余地が米国においても限定的になってきている。守りを何にするか知恵の絞りどころである。

気になる原油価格とリグ稼働数

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ベーカー・ヒューズ社の米石油採掘装置(リグ)稼働数は、北米で稼働する石油リグの数を示す。指数は毎週金曜日に公開。石油リグ統計は1944年以来70年以上にわたり一貫して集計されてきた。

実際、リグ稼働数は、主要な経済メディアや業界の出版物によって発表され、多くの統計報告に含まれている。この指数は、石油業界の活動の重要な指標とみなされている。

リグ稼働数は、石油消費と需要の先行指標と言われており、国内及び国際規模の原油価格レベルはこの指標に影響を受けるとも言われている。

一般的に、稼働中の採掘装置(リグ)稼働数が増加すると、生産量が増加。生産量の伸びは、価格の低下要因となりやすい。一方で、稼働中のリグの減少は、価格の上昇要因になりやすい。

米国のリグ稼働数とWTI原油価格の変動をグラフにまとめてみた。

青色が米国稼働リグ数、赤色がWTI原油価格。青色は、赤色の遅行指数のようにも見える。足元、WTI原油価格と米国リグ稼働数の動きに乖離が見える。青色(リグ稼働数 ≒ 供給)がしっかりと絞らて来ており、原油価格が上昇していることが確認できる。

経済活動の回復プロセスが原油価格に与える影響が大きいように見える。

気になる日経平均株価とボリンジャーバンド

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ファイナンスの理論において、市場が効率的であることを前提としている。
効率的市場仮説といった時には、以下の3つのレベルがあるといわれている。

ウィーク・フォームの効率性
将来の証券価格の変動が過去の証券価格の変動あるいはパターンから独立であるような市場。つまり、チャートを描いて、今が買いとか今が売りといったテクニカル分析が運用結果として市場平均をアウトパフォームすることはないというレベル。

セミストロング・フォームの効率性
価格情報に限らず、すべての公開情報が即座に完全に証券価格に反映されるような市場。会計情報を用いて証券分析をする、ファンダメンタルズ分析でも運用結果として市場平均をアウトパフォームすることはないというレベル。

ストロング・フォームの効率性
公開情報に加え、インサイダー情報を含めて利用可能な情報が完全に証券価格に反映されているような市場。インサイダーでも市場平均をアウトパフォームすることはないというレベル。

ファイナンスの専門家の間では、テクニカル分析はあまり信じられていないが、ファンダメンタルズ分析の価値を見る人間は多い。現実の市場はウィーク・フォームの効率性を有するのではないかと考える専門家は多い。

なぜ効率的市場仮説の話をしているかというと、今日ご紹介するボリンジャーバンドは、テクニカル分析の指標の一つ。ウィーク・フォームの効率性を前提に置くと、この分析には意味がないことになるが、興味深い指標なので、ご紹介する。

ボリンジャーバンドは、統計学を応用したテクニカル指標のひとつ。移動平均線と標準偏差で構成されている。移動平均を表す線とその上下に値動きの幅を示す線を加えた指標で、価格の分布が正規分布に従うのであれば、価格の約68%が帯の中に収まるという幅を描いている。ボリンジャーバンドは、順張りや逆張り両方で使われることがあるテクニカル分析の指標であるが、興味深いのは、ボリンジャーバンドから日経平均株価を見ると、現在の水準は日次データでも月次データでも移動平均から大きく外れておらず、足元それほど割高感はないように見える点である。(ただ、割安でもない。)

下のグラフを参照。茶色(真ん中)が移動平均の水準で、赤が+1σの水準、緑が-1σの水準を表している。月次のグラフでは12か月で、日次のグラフでは、20営業日の移動期間で計算している。今回は逆張りのケースでのボリンジャーバンドの利用例である。逆張りの場合は+1σの赤色の線に触れたら(割高ということで)、その後下落と予想。また、-1σの緑色の線に触れたら(割安ということで)、その後上昇と予想。

足元の日経平均の水準は移動平均の水準に近く短期的には割高でも割安でもない可能性が示唆される。

昨日見たように、鉱工業生産指数でみると、日経平均の価格変動は実態からの乖離を起こし、割高に見えていた。私はファンダメンタルズのビューを支持するが、テクニカル分析も合わせて状況把握をしたい。

外資系証券会社のトレーダーも、テクニカル分析を完全に信じてはいないが、時々、需給に基づいた短期の切り口として眺めたりしている。

ご参考になれば幸いである。

気になる実体経済と株価の乖離

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「気になる日本の製造業の2カ月先の見通し」ということで、6月30日に発表された5月鉱工業生産指数の速報値を昨日ご紹介した。

季節調整済み鉱工業指数と日経平均株価の月次データをグラフにしたものが以下である。5月の鉱工業指数の落ち込みが非常に大きいことが分かる。鉱工業指数の急落の一方で、足元、日経平均は回復を始めている。

このファンダメンタルズと株価指数の乖離が懸念材料。

IMFは6月25日、金融安定報告書を発表。新型コロナウイルスの感染拡大で暴落した株価を含む資産価格が急上昇している現状について経済の実態と乖離していると警鐘。相場が急落するリスクが高まっている可能性が高い。

慎重な投資姿勢が求められる局面。

気になる日本の製造業の2カ月先の見通し

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6月30日発表された5月鉱工業生産指数速報は前月比8.4%の低下。市場予測を下回った。 

4カ月連続の前月比マイナスで、水準は2015年基準では最低を更新。全業種が減少。特に、自動車、液晶製造装置など機械、鉄鋼が新型コロナウイルス感染拡大の影響による受注減で減少。5月は、4月よりも幅広い業種で減産が進んだ。 

一方、生産予測指数は6月が前月比5.7%上昇、7月が同9.2%上昇。

自動車の大幅な生産調整が幅広い業種に波及。自動車業界の生産調整の程度は6月、7月と改善する生産計画となっており、生産予測指数は改善を予想している。

なお、それぞれの指数の概要について経済産業省のページで説明されている。以下、抜粋。

<鉱工業生産指数>

<生産予測指数>

鉱工業指数は景気に敏感で、(伝統的な統計の中では)速報性があるため、足元の経済状況を把握する上で、有益である。また、生産予測指数は生産計画をもとに先行き2カ月の生産を予測するもの。

ただ、最近企業は新型コロナウイルスによる影響を生産計画に精緻に織り込んでおらず必ずしも保守的でない可能性も。5月の生産実績は計画の2倍もマイナス幅が下振れ。

このため、生産予測指数を保守的に読む必要があるかもしれない。外需依存の側面がある一方、外需を支える外国のマクロ経済においても新型コロナウィルス感染第2波への懸念が個人消費の重しとなる可能性が高い。

例えば、米国経済の国内消費は、このままでは7月以降、国内所得の減少へと進み、さらなる景気刺激策が求められる可能性が高い。

足元の相場では、特に製造業セクターへの投資は慎重に行いたい。

気になる東証マザーズとNASDAQ100の比較

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2020年6月29日の東証マザーズ指数は3営業日続落。米株安の流れに加え、国内外での新型コロナウイルス感染者の増加が伝わったことなども重しに。日経平均と同様にマザーズ指数も下落し。後場にさらに日経平均が崩れると、マザーズ指数も下げ幅を拡大。

株式市場と実体経済の間の乖離があるため、引き続き調整局面が続く可能性がある。かねてから狙っていた銘柄のフェアバリューと比べて想定的に魅力が増してきていることを慎重に確認したい。

東証マザーズ指数と米国のNASDAQ指数が同じようなコンテキストで比べられることが多いので、東証マザーズETF<2516>とNASDAQ100連動ETF<1545>のETF設定来の株価の変動を描いてみた。

青い線が日次のパフォーマンス、赤い線がETF価格を表している。上下のグラフの赤い線を見比べるとかなり違う値動きをしていることが分かる。なお、NASDAQ100連動ETF<1545>は原則為替ヘッジを行っていない。

ここでも、成長エンジンをどのタイミングで何にするのかの投資判断が重要であることを確認できる。